におい認識チップの研究

人は鼻腔内の嗅覚細胞にある300種類以上の嗅覚受容体とその興奮パターンを記録、計算する脳細胞で構成されている。 我々の研究グループはこれらの生体の機構を電気回路で模擬し、匂いの記録や識別を行うことにある。


図1、研究の概念図

匂いの識別方法についてはさまざまな方法が提案されているが、当研究室では、複数センサの出力パターンを、 脳の神経細胞を模擬したニューラルネットワークに入力し、識別する方法を採用している。 また、当研究グループでは小型で持ち運びが可能な匂い識別装置の開発を最終目標としているので、 ニューラルネットワークのアルゴリズムは比較的簡素なLVQ法を用いてFPGA上に実装する。


図2、匂い認識チップの構成図

LVQ方式では、大きく分けて学習、識別の動作がある。学習では、入力ベクトルと各参照ベクトルの距離を比較し、 最も近い最近傍参照ベクトルと入力ベクトルのカテゴリが一致した場合は参照ベクトルを入力ベクトルに近づけ、 逆に不一致の場合は参照ベクトルを入力ベクトルから遠ざける。


図3a、LVQ法の学習時の動作

識別の場合、入力ベクトルと各参照ベクトルとの距離を比較し、入力ベクトルに最も近い参照ベクトルが属するカテゴリを その入力ベクトルのカテゴリだと判定する。


図3b、LVQ法の識別時の動作

参照ベクトルを128個にした場合の動作確認を、図4に示すFPGAボードにて行った。このボードにはFPGA(EP20K1500EBC635-2X), 外部メモリ(4Mbit−RAM)、識別結果を表すLED、センサ信号を受信するBNCコネクタ、USBポート、スイッチが搭載されている。

図4、FPGA評価ボード

実験では、大気環境中に漂う匂いをそのまま吸引してセンサに導いた。センサ応答の一例を図4に示す。

図5、センサ応答の一例。(Appleフレーバー)

図5に示すように大気中に漂う匂いをそのまま吸引しているため、センサ応答が一定でないことがわかる。 本研究室ではこのような環境下でも使用可能な匂い認識チップの研究を進めている。
図4のボードを用いて実際に参照ベクトル128個分のにおいのデータを用意し、学習、識別の実験を行った。 データとしては、あらかじめ測定した学習用データを512個用意した。結果を表1に示す。 学習により識別率が向上し、またすべてのデータで高い識別率を得ることができた。

表1、FPGA上での識別結果   *Mandarinはミカン科の植物です。
サンプル Apple Banana Mandarin Muscat Total
学習前 98.4%
(126/128)
100%
(128/128)
98.4%
(126/128)
100%
(128/128)
99.2%
(508/512)
学習後 98.4%
(126/128)
100%
(128/128)
100%
(128/128)
100%
(128/128)
99.6%
(510/512)