水晶振動子匂いセンサ用マルチチャネル高速周波数計測回路の研究
匂いの識別にはセンサの過渡応答解析が有用であるため,センサの過渡応答波形を計測する高速かつ高精度な周波数変化計測システムの実現が望まれていた.そこで
- 周波数分解能 : 0.625Hz
- 時間分解能 : 128ms(従来の8倍)
となる周波数計測回路を開発した.更にこの計測回路を各センシングシステムに組み込めるようにASIC化を行った.
直接係数方式とは一定時間(分解能1Hzの場合には1秒)のパルスをゲートパルスとし、計測したい信号の入力パルス数を測り、直接的に周波数を計測する方法である。
それに対してレシプロカル方式とは計測したい信号をゲートパルスとし、その時間内にクロック信号のパルス数を測定することで信号の周期を計測し、その逆数をとって周波数をする方法である。


右図はnチャンネルレシプロカル周波数計測回路の全体構成図である。センサからの信号をミキサ回路で周波数変換し、レシプロカルカウンタ回路に入力する。 そのカウンタ出力を周期に変換する。 計測が完了したかどうかをフラグ回路で検知し、全てのフラグがHになった(データが全て計測できた)状態で外部へ一斉送信する。
本回路は,各チャンネルのセンサ信号入力を参照信号により周波数変換するミキサ回路部,変換した周波数を計測する周波数変化計測回路部があり,
それらの出力を多チャンネルシリアル出力回路(シフトレジスタ)を用いてコンピュータに出力する方法をとった.
また、CPUコアを介して学習回路と接続するためにパラレルポートを使用して出力することもでき、これにより匂い識別回路全体を1チップに集積することができる.
また、本方式はレシプロカル方式を用い時間分解能と周波数分解能を同時に満足する回路となる.
右図は開放空間に放出した匂い(芳香剤:アップル)の測定結果である.直接係数方式とレシプロカル方式で水晶振動子ガスセンサの応答を同時に測定した.
同図より直接係数でとらえられない早い濃度変化をレシプロカル方式で検出できることがわかった.

全ての回路はハードウェア記述言語VHDLで設計を行い,論理合成ツール(Altera社,QuartusII Ver 4.0)を用いて論理回路化し,FPGAに実装した.


更に小型化し,各種センシングシステムに組み込めるようにマルチチャネル高速周波数カウンタのASIC設計を行った. 本研究では,MOSISを利用してCMOS 0.35μmルールでスタンダードセル方式により設計を行った.このチップは,既に正常に動作することを確認している.