香る料理体験ゲーム

 本研究室では、数年前より匂い調合装置を開発しており、今回は使用者自らの操作に 応じて香りが適宜切り替わり提示される。インタラクティブ性を持つ香り体験コンテンツを作成し、より強い臨場感を得られるシステムを開発した。
米国の学会での実演風景(IEEE Virtual Reality 2007)


1. 嗅覚ディスプレイの構成

本研究で開発したシステムは、大きく分けて匂いを発生させる嗅覚ディスプレイと ユーザが操作を行うインターフェースの2つで構成される。システムの構成を図1に示す。
図1 システムの構成図
Fig.1 Sketch of whole set up
本システムでは、体験者はユーザインターフェースを担当するPCのみを操作する。
このPCで動作しているコンテンツの内容に応じた操作をユーザが行うと、その操作に合わせてリアクションが起こり、
そのリアクションに合わせた匂いを出すための、予め設定しておいた信号がこのPCからMIDI信号として出力される。


2. コンテンツ及びユーザーインターフェース
本研究ではユーザが操作を行うことで匂いが変化するということが重要である。
そこで、作成するコンテンツには老若男女問わず身近である料理という題材を選択し、その中でも匂いが分かりやすい品目としてカレーを選択した。
このコンテンツではボタンを操作することにより様々な食材を鍋に入れていき、最終的にカレーを完成させるもので、食材を入れる時に映像に合わせて音と香りが発生する。

図2 インターフェース画面
Fig.2 User Interface of Cooking Game
このコンテンツでは操作の手順を10のステージ(表1)に分け、 さらにフローをチャート化し各ブロックそれぞれに0〜48まで順に番号を割り付けている。
表1 ステージ番号
Table.1 Stage Number
1.油orバターをひく 2.ニンニクを炒める(量の増減有り) 3.タマネギを加え炒める 4.人参を加え炒める 5.肉を加え炒める(量の増減有り) 6.水を加える 7.ワインを加える 8.ルーを加える 9.スパイスを加える 10.カレーの完成
例えば、最初に「油」のアイコンをクリックするとユーザ側のPCから1番のMIDI信号が出力され、変換回路を通って嗅覚ディスプレイ制御用のPCに入力される。そして画面左に油が投入される動画・効果音と共に、1番に対応する匂いレシピ(ここでは油)の匂いが流れる。その後、「次へ」をクリックすると次のステージへ以降する。
これをカレーの完成まで順次行う。なお、2ステージ目である「ニンニク」と5ステージ目である「肉」に関しては、ユーザの好みに合わせて3段階まで匂いの強さを増減させることができるようにした。


3. 嗅覚ディスプレイ変換回路
 ユーザインターフェース用PCから出力されるMIDI信号はレベル変換、信号の速度変換を行って制御用PCに入力される。
信号の速度変換用回路には内部メモリを持ったFPGA(Altera, EP1C12Q240C8)を使用し、 入力された31.25kbpsの信号を一旦メモリに取り込み、115.2kbpsに変換して出力するという方式をとっている。
FPGA内にはCPUコア(NIOS)を実装し、CPUコアを介して内部メモリへのデータの書き込み、読み出しを行った。


4. 調合装置

 本システムの匂い調合装置には、8成分用電磁弁開閉制御式匂い調合装置を使用した。この装置の構成を図4に示す。
図4 匂い調合装置の構成

Fig.4 Structure of Odor Blender
 匂いを調合する部分では、液体試料をサンプル瓶に入れており、そのヘッドスペースに溜まった匂いが要素臭となる。空瓶と液体試料の入った瓶をペアにして用いるために実際には16個の瓶を使用している。また、各系統の流量を等しくするために、各系統の流れが互いに対称になるような構造になっている。

 匂い供給口には、空瓶を通った空気もしくは液体試料のヘッドスペースのいずれかが供給される。このように空瓶とペアにして用いることにより、供給口の流量を一定に保つことが出来る。また、常にヘッドスペースの匂いが供給されている状態を100%RCとして、そのヘッドスペースの匂いが供給されている割合が供給される匂いの濃度となる。各要素臭は独立に動作し、要素臭ごとに任意の濃度で制御することが出来る。また、図5における下部のバイパス系統は、サンプル瓶を通過する流量を一定にするために用いる。この上下の系統の流量は等しくなるように、バルブ付き流量計で調整して合わせる。また、サンプル瓶から見ると常に上下のどちらかの系統で吸引されていることになるので、常に一定の流量で吸引されている。この流量が変化するとヘッドスペースの香りの濃度が変化するので、100%RCとしている濃度が変化することになる。そこで、このような配管と流れのフローを用いることにより、各サンプル瓶及び供給口の流量を一定にすることを保証している。